第二十三話『宿題会』

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第二十三話『宿題会』

 夏休みも終盤である。みる香は全ての予定が終わり、残りは宿題に時間を費やそうと朝食を食べながらそんな事を考える。何度思い返しても、今年の夏休みは充実した時間であった。  ショッピングをはじめに、友達と宿題をしに家まで出かけ、動物園や海、夏祭りにも行った。こんなに楽しい夏休みを送れていいのだろうかと不安になってしまうほどである。今この瞬間をみる香は満足気に感じていた。 「夏休み、最高だったなあ」  椅子に腰掛け、これまでの休みを振り返っていると突然頭の中にテレパシーが流れ込んできた。慣れてきたとはいえ、急にくるのはいささか心臓に悪い。 『おはようみる香ちゃん。君さ、宿題終わってる?』 「げ」  思わず言葉で本音が出る。バッド君にはバレているかもしれないが、みる香は宿題が夏祭り以来、手付かずの状況であった。それを指摘され、逃げ出したくなるような羞恥心に駆られる。 『あはは図星みたいだねえ』  みる香の返事がないことでバッド君はそう決めつけていた。その通りであることがとてつもなく無念である。  みる香は『あと三分の一残ってる』と正直に告白するとバッド君は笑いながらこれから宿題会でもしようかと提案してきた。やる気が出ないみる香にとっては良案である。  みる香は二つ返事で了承するとバッド君はこれから向かうとテレパシーを切った。みる香はそこでふと思い出す。 『ねえ! 見える結界張るの忘れないでね!?』  もう一度テレパシーでそう送ると爽やかな声でバッド君は『忘れてないよ』と返してきた。その返答にホッと胸を撫で下ろしているとみる香は急いで身支度を整える。いくら相手がバッド君とはいえ、ニートのような格好で宿題会をするのはみる香のプライドが許せなかった。それなりに寝癖を整え、簡単なワンピースを着ると過去の失態を思い出す。 「そっか、バッド君は男だしスカートはやめとこう……」  そう思い直したみる香はワンピースからオールインワンに着替えると身支度は数分で完了した。あとは彼の到着を待つだけである。  二十分ほど経ってからインターホンが鳴ると、みる香はドアホンを確認してバッド君であることを確認する。母が「仲が良いわねえ」と横で嬉しそうに溢すので「友達だよ」と念を押した。勘違いは困るからだ。  それからすぐに玄関の鍵を開けると猛暑だというのに爽やかな顔をしたバッド君が「お邪魔します」とにこやかに玄関口まで入ってきた。そのまま二人で二階に上がり、みる香の部屋へと入る。  部屋の扉を閉めたところでみる香はすぐに結界を張るよう促すとバッド君は笑いながら人間のみる香でも視認できる結界を張ってくれた。これで安心である。
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