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ブーブー言いながら文句を言ってやるとバッド君は「今は俺の話は置いといてさあ」と困ったように笑っていた。そんなバッド君の弱々しげな姿はみる香にとって貴重で面白く、思わず笑ってしまう。
バッド君は困り顔で苦笑していたがみる香が楽しそうに笑うので妥協した様子でこちらが笑い止むまで待ってくれていた。みる香が笑い終わるとバッド君はここぞとばかりにみる香に小言を言ってくる。
「でも本当に次からは男一人でもいいから呼んでね? みる香ちゃんだって慣れてない場所なんだから……」
「あはは、わかったよ。じゃあ来年はバッド君にもついて来てもらおうかな」
「え?」
「それなら良いでしょ?」
そう言ってバッド君の方を見ると彼は少し固まった様子でみる香を見た。その様子が気になったみる香は「バッド君?」と問いかけると彼はすぐに「ああ、そうだね」と爽やかに笑い、それ以上その話題には触れなかった。
みる香は彼のいつもとは違う妙な雰囲気に違和感を持っていたものの、詮索することは止めた。なんとなく困らせる気がしたからだ。
「今日は結構進んだ! 明日で終わりそうだよ〜ありがとね」
「それは良かった。俺も結構進んだからお互い様だね」
夜になり、バッド君はそう言ってみる香の家を出ようとしていた。夏の夜はまだ明るい。バッド君は暗闇になりきれていない空の下、みる香に手を振ってから自身の自宅へと足を進める。
みる香はそんなバッド君を見送りながら、今日は何となく彼の姿が見えなくなるまでその場にいた。別れを惜しんでいる自分がいることに気がついたのは寝る前のことだった。
第二十三話『宿題会』終
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