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第二十四話『新学期』
夏休みの宿題も無事に終わり、新学期を迎えた。時間は驚くほどに早く流れていったが、それが友達と過ごした故のことであるみる香にとっては夏休みを短く感じても少しも惜しくはなかった。
みる香は家族旅行で用意していたお土産をみんなに配った。これは夏休み明けにみる香が一番したかったことだ。家族と旅行に出かけてもいつもお土産を買う友達など一人もいなかったみる香はお土産コーナーを覗くのが嫌いだった。だが今はそうではない。
嬉々とした様子でそのままバッド君にもお土産を渡すと彼は少し驚いた様子を見せた後に「感動だな〜みる香ちゃんからのお土産なんて」と柔らかく笑っていた。
夏休み明けの学校では文化祭の準備で多くの生徒達がそわそわし始める時期だ。みる香もその一人だった。今年は友達のいる文化祭なのだから楽しみにならないわけがなかった。
(新しい友達もできたりするかな)
流石に欲張りすぎだろうか。しかしみる香は期待していた。今回はバッド君に頼り切りにならず自分からも動いてみよう。彼との契約も永遠ではないのだ。
契約が終わった後のことを考えれば、自分から友達を作る力も身に付けておく必要があるだろう。だが、バッド君とは契約が終わってもきっと友達を続けられるはずだ。彼自身も、みる香と友達になりたいと言ってくれていたのがみる香の信じられる根拠になっていた。
しかしそこでみる香は何か喉の奥に引っ掛かりを感じるような違和感を覚える。何だろうか、この違和感は。
(あれ……バッド君、あの時…)
不意にみる香は夏休みの終盤にバッド君と二人で宿題会をした時の事を思い出していた。海の話をしたら珍しく彼が動揺していた時のことだ。みる香が来年はバッド君にもついてきてもらおうと彼に提案していたのだが、彼の反応は少しおかしかった。
あの時はよく考えていなかったが何だかそれが今になって気になり始めていた。しかしその先を考えるのは何故か気乗りしなかった。みる香は文化祭の出し物について議論をするクラスメイト達の話に頭を集中させ、それ以上の思考は意図的に遠ざけることにした。
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