第二十四話『新学期』

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『みる香ちゃん、これ見たら中庭まで来てほしいな』  これは一体どういうことだろう。中庭には先程女子学生と二人でいたではないか。いや、そもそもこの書き置きはいつ頃置かれたのだろう。  そこまで考えたみる香は急いで階段へと向かい始める。中庭に行くためだ。わざわざ戻らなくともテレパシーで彼とコンタクトをとる方が一番確実で、あの女子学生に顔を合わす事もないためそれが一番良いことは分かっていた。  しかしみる香は直接、バッド君に会いたかった。  急いで向かったせいでみる香の脈は早まっていた。息切れは激しく、思わず中庭の扉の前でしゃがみ込む。限界がきていた。やはり、運動不足というものはいい事がない。そんな事を痛感していると中庭の扉は開け放たれ、目の前にバッド君と女子学生が現れた。 「「あ」」  同時にみる香とバッド君の声が重なる。みる香は瞬時に立ち上がるとバッド君に書き置きを見せる。 「これ……見たから…えっと」  するとバット君は笑いながら「律儀だなあ、みる香ちゃんは」と言ってみる香の書き置きを手に取る。そして隣にいる女子学生に「約束があるからごめんね」と謝罪の言葉を口にした。  女子学生は「大丈夫、気にしないで」とにこやかに笑うと一瞬だけ、みる香に敵意のような目を向けてからその場を立ち去る。  彼女の姿が見えなくなるとバッド君は「大丈夫?」とみる香を気遣う言葉を口にした。 「大丈夫って何が?」  率直に尋ねるとバッド君は困ったような顔をして返答する。 「今の子、思いっきり君の事睨みつけちゃってさあ。バレバレなのにね」  そんな言葉を口にした。みる香は驚きと疑問と、安心が同時に降り注ぐ。そして目の前にいるバッド君に気付いていたのかと言葉を発すると彼は再び困ったように笑いながら声を出した。 「今回はちょっとめん……いや、困った子でね。何もしてないんだけど俺を諦めようとしないし、挙句の果てにはみる香ちゃんを敵対してるから一筋縄じゃいかなくてさ。みる香ちゃんをよく思ってなさそうな事は最初からわかってたよ、なんか女の子ってそういう空気出るよね」  本当に困ったようにそう言って自身の後頭部を掻くバッド君は何だか新鮮だった。みる香はもう一つの疑問を再び口に出し問いかける。
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