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「よく半藤君といるよね〜」
「え、うん……友達だから…」
みる香は気まずさと緊張感から声が震える。いつものように騒がしくしていればいいものをなぜかクラス内は静まり返り、みる香と栗井の会話に注目されていた。注目を浴びるのは本当に苦手だ。
みる香の弱々しい回答に栗井はふーんと言いながらもう一度みる香を見てきた。
「よく二人でいるとこ見るんだけど、いつもどっちから誘ってるの?」
「え、どっちって……」
栗井の口調には敵対的なものは感じられない。声色はいたって普通だ。だがなぜか、尋問されているようなそんな気分になる。
「その髪型、ずいぶん可愛いけど、半藤君に見て欲しかったの?」
「え?」
次から次へと質問を繰り出してくる栗井にみる香は初めて恐怖を感じた。こんな大勢の人間が見ている前で言わなくてもいいのではないだろうか。
しかし栗井の声は大きく、その大きさは廊下にまで聞こえそうなほどのボリュームだった。
みる香はこの場から逃げ出したくなった。ただ質問をされてるだけで、責められているわけではない。それは分かっているのだが、大衆の前で質問ばかりを向けられるこの状況は、みる香には堪えた。
「あ……えと………」
みる香はきちんと言葉が発せられなくなっていた。この感覚はよく覚えている。数年間、ずっと治すことのできなかったコミュ障が再発しているのだ。
声を出したいのにきちんと言葉が発せられない。みる香はパニックになりかけていた。
(どうしよう……やばい……)
ふっと身体の力が抜けた。みる香は気がつけば地べたに座り込んでいた。これはまずい。しかし、力を入れようにも足は動かない。精神的なものなのだろうか。いつもより脈は速まり、肩が震え出す。これではまるで変人だ。
大勢のクラスメイトの前でこんな姿を見られるのはとてつもなく屈辱的だった。数多の視線がみる香に注目されているのが感覚で伝わる。逃げ出したいのに足が動かない。
「え、大丈夫? 何いきなり」
栗井はそう言ってみる香に手を伸ばす。みる香はその様子に安堵して、そんな彼女の手を掴もうとするが、差し出された手は突然戻された。
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