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しばらくするとバタバタと騒がしい足音が聞こえ、保健室の扉が乱雑に開け放たれる。扉から現れたのは檸檬に星蘭子、莉唯に桃田、そして――バッド君だ。
「森村ちゃん!!!」
目が合った檸檬は途端にみる香に抱きつく。みる香は驚きながら思考を巡らせた。先ほどバッド君が戻ってきたがまたすぐに出て行ってしまったのだ。
そして戻ってきたと思ったら今度はみんながいる。
なぜ、バッド君はみんなを連れてきたのだろうか。しかしその疑問はすぐに檸檬の言葉で解決した。
「桃田ちゃんに全部聞いたよ! クラスの奴ら……サイッテ―。私は森村ちゃんの味方だからね!!」
「みるちゃん大丈夫? 声出ないって聞いたよ……何かあったらメモでもレインでもなんでもして? あたしらはいつでも力になるよ!」
「みるちゃん、話せなくても大丈夫! 私が通訳になるから!!」
そんな、嬉しい言葉をかけてくれる。彼女達の発言からしてみる香のあの思い出したくもない出来事はすでに聞いているようだった。
しかし、それを聞いても尚みる香の肩を持ってくれる友達が目の前にいることにみる香は喜びと、言葉にし難い温かさを感じる。
ニコリと笑みを向け、大きく頷いてみせると三人はみる香の手を温かく握ってくれた。
声を出そうとしてみたが、まだ精神的なショックからか、言葉は出せずにいた。もう時間も遅いということで、檸檬達は保健の先生から帰宅を命じられ、泣く泣く帰っていく。
しかしバッド君と桃田だけは自宅まで送り届ける役目としてまだ残ることを許可されていた。
事情を聞いた保健の先生からは両親へ連絡をすると言われていたが、みる香はそれだけは止めてほしいと必死の思いでそれを紙に書き記した。両親には、何も知られたくなかったからだ。
みる香の懇願する姿勢と、バッド君と桃田のお願いが響いたのか、先生は仕方がなさそうに折れてくれた。両親には風邪を引いて声が出ないと誤魔化す事にした。
「みる香ちゃん、歩けるようになってよかったね。声もその内出せるようになるはずだから、心配しないでね」
帰りの道中、バッド君はずっとそんな言葉をかけながらみる香を励ましてくれた。バッド君への気持ちに気づいたみる香は何だかそれがこそばゆかった。
みる香を囲むように両サイドで歩くバッド君と桃田は、自分のことを守ってくれているのだという安心感が強く、いつも以上に頼もしかった。
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