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バッド君への気持ちを自覚してからは、彼と距離を取ることが増えた。厳密に言えば、友達として今でも仲良く接しているのは違いないのだが、物理的な距離感をあえて取るようにしている。
彼の肩がみる香の身体に当たるだけで、とてつもなく緊張してしまうからだ。初恋というものは、中々に厄介なものなのだとみる香は身を持って体感していた。
彼への気持ちはまだ誰にも打ち明けていない。これに関しては少し気になることがあった。それにバッド君を好きになったからといって彼との未来など、期待はしていなかった。
彼がいかに昇格を大事に思い、人間を本気で好きになるつもりがないのかをよく知っているからだ。
彼がみる香を友達として認識してくれていること自体は疑っていないが、根本的に軸となっているものが何であるのかをみる香は理解している。だからこれは叶わない恋だろう。
契約して間もない頃、バッド君に忠告をされていた事を思い出す。自分のことを好きにならないように気をつけてね、と彼は口にしたのだ。
あの時は自意識過剰にも程があると鼻で笑っていたが、今ではそう思えない。あんな事を言われたにも関わらず、好きになりましたなどと彼に告白をする勇気はない。
だからこの気持ちを伝えるつもりはなかった。理由はもう一つあったが、この理由だけでも十分なほどに告白という選択肢はなかった。
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