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「あれ、みる香ちゃん大丈夫? どうしたの」
「みる体調悪いの?」
そんなみる香の様子を奇怪な目ではなく、心配そうに案じてくれる二人はやはり良い友達だ。そう実感しながら余計な心配をかけたことを謝罪した。
「ごめん大丈夫、バッド君が近くて驚いただけ」
そう答えてそっと立ち上がると二人は笑いながらみる香の両肩をポンと叩いた。
「みる免疫なさすぎ、ウブだね」
「みる香ちゃん相変わらずだねえ」
バッド君には幸いにも男に免疫がないからこうしてすぐに顔が赤くなるのだと思われているようだった。
気持ちを知られたくないみる香にとってそれは好都合だ。バッド君と颯良々の二人は楽しそうにそう言いながら止まっていた足を動かし始める。
頬の赤みがとれたみる香も二人に習って歩き出す。朝から色々とあったが、今日も好調だ。
(あ……)
廊下で意図せず目が合ったのは栗井だった。みる香はあれ以来、彼女と対面をしていない。
顔を見たのは久しぶりだった。謝罪されることも再び何かを言われることもなかったため、彼女のことは考えないようにしていた。
「みる香ちゃん、予鈴鳴っちゃうよ」
「教室行こう」
二人は栗井には目もくれずみる香の背中を押すとそのまま彼女の横を通過した。
チラリと彼女に目を向けるが、栗井は居心地が悪そうにみる香から視線を外しているだけだった。
(あんなに強気だったのに、変わるものなのかな)
彼女の態度が不思議でどこか違和感を感じるのは間違いなかった。
彼女は大勢を前にしてもあれだけみる香を責められるほどの気構えがあったのだ。なのにバッド君が助けに入って以降は何もされてはいない。やはり、彼と何かあったのだろうか。
そう疑問を頭に思い浮かべながら歩いていると不意にバッド君の大きな手がみる香の背中を押していることを思い出す。
途端にみる香は「あっ歩くから手、離して……」と声を上げ、その真っ赤な顔で二人から本日二度目の笑いを受けるのであった。
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