第三十一話『心境』

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「半藤くんっ!!」  飯島の家を後にして数分歩くと突然後ろから女の声が聞こえてくる。  半藤はそのまま振り返ると相手は長谷川だった。  何かあったのかといつものように笑みを見せながら問いかけると彼女は顔を赤く染めながら一緒に帰りたいと口にした。  今はみる香もおらず変ないざこざは起こらないと判断し、半藤はその提案を受け入れると二人で肩を並べて歩き出す。それにしても、少々厄介ではある。  長谷川は性格も温厚で数日の関わりから推測すると裏表はなさそうだ。  みる香に対しても友好的な態度をとっており、その態度に黒い部分などは感じられなかった。  ゆえに半藤も現時点で、彼女に対して負の感情を持ち合わせているわけではない。好きでも嫌いでもないのだ。 (ただ……)  懸念すべき点は、この後起こるであろう展開だ。想像通り、長谷川は途中で半藤に声をかけた。  些細な雑談をしながら歩いていたのだが、突然彼女は決意した様子で声の調子を変えてきたのだ。  長谷川は半藤に目を向けながら言葉を続けた。 「半藤くん、あの……わたし、半藤くんの事が…」  ロングスカートをぎゅっと掴みながら彼女は口籠る。しかし数秒の後直ぐに続きの言葉を発してきた。 「好きなんです……付き合ってくれませんか?」  正直なところ、長谷川は半藤から見て興味を惹かれる外見をしていた。だが、今の半藤には彼女の告白を受け入れない理由とその意志の強さが明確にある。  半藤は告白をしてきた長谷川に顔を向けると返事を返した。 「ごめんね、君とは付き合えないよ」  何度も告げたことのある断り文句を彼女に放つ。  通常であれば、ここで大抵の女は逃げ帰っていくのだが、長谷川はそうではなかった。  彼女はもう一度口を開くと二回目の告白をしてきた。
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