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第三十三話『昇格』
「昇格なんて正直、もうどうでもいいんだ」
(えっ……!?!?)
「みる香ちゃんの方が大事だよ」
バッド君はみる香の顔を見て真剣な表情でそう告げる。みる香の鼓動は次第に高まり、彼の顔を正面から見据えることができなくなってくる。
そして彼の言葉に動揺するみる香は何を口に出すべきなのか分からなくなっていた。
「あれ?」
そこで目が覚める。みる香は夢から覚めたのだ。見上げている天井はいつも通りの自分の部屋のもので、何も変わった様子はない。今のは夢ということで間違いないだろう。
「何であんな夢見ちゃったんだろ……」
小さくため息をつきながらみる香は準備を始める。身体には汗をかいており、夢の出来事に影響されたようだった。
(バッド君があんな事、言うわけないのに)
みる香は支度を済ませるといつものように朝食を摂ってから学校へ行こうと玄関の扉を開ける。
「おはようみる香ちゃん」
「バッド君……」
今日もバッド君は何の連絡もなしにみる香の家まで来てくれていた。嬉しいという気持ちがすぐに心の中に生まれるが、なるべく顔に出さないように彼におはようと挨拶を返した。
せっかくなので今朝見た夢を彼に報告してみることにする。するとバッド君は珍しくも驚いたような様子でみる香を見てきた。
「えっどんな夢見たの!?」
「どんなって……」
バッド君の表情は気になって仕方がなさそうなそんな顔をしていた。そこまで彼が他人の何かを気にするのは珍しい気がする。
しかし夢の内容を伝えることは複雑だった。昇格を第一と考えているバッド君もこれを聞いて良い気はしないだろう。
みる香は苦笑いしながら「忘れちゃった!」と口にする。バッド君が出てきたことだけ覚えていると追加で話すと彼は少し残念そうにみる香から顔を背けた。
そしてチラリと目線だけこちらに向けるとこんな言葉を口にした。
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