第三十四話『知らない一面』

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 週末は檸檬と颯良々の三人で勉強会だ。  みる香は最近購入したトップスにフレアパンツを合わせて颯良々の家へと向かう。  一度訪れた事のある颯良々の家はハロウィンパーティーの時とは違い、シンプルな内装に変わっていた。  家具はどれも豪華なのだが必要最低限の家具のみで、部屋は前回よりも広々として見えた。  みる香と檸檬は案内されるがままに颯良々の部屋へと向かい、三人での勉強会がはじまった。  数時間ほど集中した後に休憩しようと昼食を出してもらうことになった。あまりにも豪華な昼食のラインナップにみる香と檸檬は目を輝かせながら有り難く食事を頂く。  しかし昼食代を払わなければと思い至ったみる香は財布を取り出し颯良々に現金を渡すが、彼女は笑いながらそれを返してきた。 「いいんだって、私の金じゃないし親が出してるから。気にしないで」 「でも……」 「みるは真面目だよね、そういうところが長所なんだと思うけど」 「そうだね〜! 森村ちゃんは真面目だと思う!でもそういうのが森村ちゃんらしいよね」  檸檬も颯良々も決して嫌味ではなく、みる香の良いところとして話してくれているのがわかる。親しみを感じるこの会話がみる香は嬉しかった。  そして二人と過ごす時間はとても楽しいと改めて実感する。そんな事を思いながら三人で談笑を続けた。  いつの間にか時間は夕方になり、集中力の切れたみる香達は雑談を始める。そこでお決まりな話題が檸檬から繰り出されてきた。 「恋バナしようよっ! みんなの初恋知りたいな〜」  今なら檸檬の恋バナにも共感できることがたくさんあったみる香はその意見に賛成すると早速みんなの恋バナが始まる。勉強はおそらくもうしない雰囲気だ。  檸檬は自分の初恋は小学生であったと楽しげに話し始める。けれどその後すぐに好みの男の子が転校してきて乗り換えたと言う話もしており、みる香と颯良々は笑いながらその話に相槌を打っていた。  颯良々の初恋は中学の時だったようで元々大人に興味があった彼女は近所に住む大学生に片思いをしていたらしい。その人は卒業と共に引っ越してしまったため恋心はいつの間にか吹っ切れたそうだ。  みる香は二人の話を聞いて二人とも初恋を終えていることに気づく。 (そうか、私だけ今初恋なんだ……)  それに対して否定的な考えは全くなく、みんなそれぞれのタイミングで初恋を迎え終えているのだと実感していた。 「次! 森村ちゃんだよ! 初恋はいつなの〜?」  初恋は今であると本当は打ち明けたくて仕方がないのだが、それではゆくゆくバッド君に知れ渡る可能性は否定できなかった。  心苦しいが、初恋はまだであると伝えると二人は驚いた様子で質問を投げかけてきていた。確かにこの歳で初恋がまだと言うのは珍しいのかもしれない。  みる香は二人の質問に答えながらこの想いを切実な気持ちで噛み締めていた。
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