第三十四話『知らない一面』

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 恋バナが一段落すると、三人は学力の話に話題を切り替えていた。  補習にならないといいねという話から広がったのだが、次第に話がクラス内で誰がトップを維持しているかの話に移り変わっている。  みる香の通う高校はクラス順位と学年順位の両方が毎回張り出しされるシステムだ。そのためクラスの誰が頭がいいのかは案外周りに知られていた。 「神頭(じんどう)は結構一位ばっかだよね〜」 「矢井場(やいば)さんもいつもトップスリーだよね」  そんな話をしていると急にみる香の耳に聞き慣れた名前が響いた。 「半藤もさ、一時期トップに入ってたよね〜あいつ補習にもなってたけど」  バッド君の名前が上がるのは嬉しかった。好きな人という存在は、名前が上がるだけで嬉しい気持ちになる。そんな事を今日初めて実感した。  バッド君の成績については、みる香が関与していなければ彼は間違いなくトップに君臨し続けていただろう。  しかしみる香と補修を受けるために彼は一学期の中間テストで自ら全科目を赤点にしていたのだ。  教師や何も知らない生徒からすれば彼の学力には不思議な印象を受けるのもおかしな話ではなかった。 「森村ちゃん、よく半藤に勉強教えてもらってるよね! やっぱり分かりやすい?」  すると檸檬からこんな質問が放たれる。みる香はすぐに頷くと「なんでも答えてくれるから博士みたいだよ」と言って笑いながら答えた。 「みる本当、半藤と仲良いよね」 「え、そうだね……バッド君は唯一の男友達だから」  男友達だと思っているのは嘘になってしまうが、彼と仲が良いことは本当だと思う。そう思っているのはみる香だけではないはずだとそう思いたい。  すると颯良々はうんうんと頷きながらこんな言葉を口にした。
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