31人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
「最初は半藤って胡散臭いやつだと思ってたけど、あの話聞いてから見方が変わったよ」
「あの話?」
あの話とはどのことだろう。バッド君の噂話は数え切れないほど出回っていたが、最近の話のことだろうか。
みる香は颯良々を見ながらそう聞き返すと彼女はすぐに答えを教えてくれた。
「あんまり思い出したくないかもしれないけど文化祭の時の話だよ、あいつ栗井に図々しいから二度と来るなって啖呵切ったんだって。物凄い圧だったらしいよ。だから悪魔の半藤なんて呼ばれたんだよ」
「ね、それは私も聞いたよ〜森村ちゃんの話はクラス内に収まってたんだけど、半藤の話はどんどん広まってたからね〜その話聞いて私は半藤見直したよ! まあ森村ちゃんと仲が良いって知ってたからあいつの行動には納得だけどね」
「そうそう、半藤って普段ふざけたようなところあるじゃん? そんなあいつがみるの事でマジギレしてたから、二人の友情は熱いなって思ったな」
と二人は次々とそんな言葉を告げてくる。みる香は驚きで開いた口が塞がらなかった。
そりゃあバッド君があの時、みる香を助けてくれたことは実際に目の前で見ていたため知っているが、彼が栗井に対してそのような暴言を放っていたとは思いもしなかったのだ。
そんな言葉を吐くような性格でもないだろうに。
その事を二人に話すと確かにそうだよねとみる香の意見に同意しながら再び檸檬が声を上げた。
「でも普段温厚な人って怒ると怖いっていう話、結構聞くよ。半藤もその部類なんだろうね。まああいつは温厚ではないけどさ」
檸檬のその言葉でみる香は納得をする。確かにその話はどこかで聞いたことがある。バッド君は怒らせるといけないタイプの天使なのだろう。
そんな新たな情報を手に入れたみる香はそれが何だかすごく嬉しかった。
彼が自分のことでそこまで怒ってくれていた事にも、彼の知らなかった一面を知れたことにも喜びを感じる。
三人でバッド君の話をしていたせいか無性に彼に会いたい気持ちが増したみる香は帰り際にバッド君へレインを送るのであった。
第三十四話『知らない一面』終
next→第三十五話
最初のコメントを投稿しよう!