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第三十五話『好きな人との』
期末テストに向けて勉強に励む時間が増えたみる香はいつもの面子に星蘭子と莉唯を交えて五人でテスト勉強をするようになった。
図書室が空いていない時は颯良々の家にお邪魔してみんなで勉強に没頭する。友達とメリハリよく勉強することでやる気は向上していた。
そんなある日、今日もみんなで放課後勉強をしようと教室を出ると廊下でバッド君に会う。
みる香は笑顔を向けながら「また明日ね」と声をかけるとバッド君はこんな言葉を言ってきた。
「みる香ちゃん、テスト明けたら遊びに行こうよ」
「えっ!!?」
「駄目?」
バッド君は前触れもなくそんな事を言うとみる香に距離を縮めてこちらを見つめてくる。分かっているのだ。彼はそんなつもりではないと。
だが想い人であるバッド君との距離が徐々に縮まる事に平静を保てないみる香は顔を真っ赤に紅潮させながら「近いってば!」と声を上げた。
いくらなんでも可愛げのないこの態度に自己嫌悪に陥りそうである。
するとバッド君はごめんごめんと笑いながらみる香から遠ざかると「遊びに行くのはいいよね?」と何のしがらみもない顔をして爽やかに言ってくる。
遊びの誘いは素直に嬉しいが、これはまた二人きりでと言うことなのだろうか。
(それって……デートじゃん!!!)
前回二人で遊びに出た時こそは、デートだと思いながらもしかし彼への気持ちは友達のままだった。
しかし今回は違う。完全にバッド君への想いを自覚しているのだ。これをデートと呼ばずに何と言うのだろう。
だがバッド君はみる香の思考を否定してみせた。
「勿論、デートじゃないよ。君との友情を深める遊び。手も繋がないしハグもしないしキスもしないから安心してよ」
「なっ……」
みる香にとんでもない言葉を言いながらバッド君は楽しそうである。
しかし彼の提案を断る理由はみる香になかった。好きな人とのお出かけなど、断る理由などない。
むしろ天に登るほどの嬉しさが込み上げてきており、何よりみる香自身が彼と一緒に出かけたいとそう思っていた。
「わ、分かった……いいよ」
「よかった。補習にならないでね?」
みる香がそう答えるとバッド君は手をヒラヒラとさせてそう口にする。時間を気にして手を振ってくれたのだろう。
みる香は「勿論だよ」と声を返すと彼に手を振り返して待ち合わせ場所である図書室へと向かった。
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