第三十五話『好きな人との』

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「これで良いよね……うん」  数時間の格闘の末、みる香が選んだのはリブ素材のニットにミモレ丈のスカートだった。これなら気合を入れすぎていることもなく、しかしてデートと言えなくもない。無難な格好である。  そう決めたみる香は髪の毛をハーフアップにして、以前檸檬に教えてもらったヘアアレンジを挑戦してみる。暇な時間がある度に挑戦し続けてきたヘアアレンジは存外上手くいった。  みる香は鏡に映った自分の姿を確認すると一人「うん」と呟くのであった。  実際には数時間以上かかっていたが、気合を入れすぎていないように見えるこのスタイルは我ながら完璧だと思う。  そのまま朝食を済ませ、待ち合わせの時間までスマホを操作していると突然レインの通知が鳴り出す。 「ば、バッド君からだ…テレパシーじゃないの珍しいな」  珍しくレインが届いたみる香は一瞬驚きながらも通知を開き始める。内容は今日の件についてだ。バッド君からはおはようというスタンプの後に用件が送られてきていた。 『これからみる香ちゃん家まで迎えに行くから家で待っててね』  そんな内容だった。デジャヴを感じるこの展開にみる香は何となく嬉しさを覚える。  これは彼なりのエスコートなのかもしれない。友達と思われていてもみる香を女として気遣ってくれるところがまた嬉しいと感じる。  みる香は無意識に口元が綻ぶのを感じながら彼の到着を待った。
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