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「おはようみる香ちゃん、今日も寒いねえ〜」
バッド君はマフラーを巻き直しながらそう挨拶をしてきた。彼の服装はシンプルではあったがこなれており、彼によく似合っている。かっこいい。
「おはよ! 寒いけど、歩けばあったまるよ」
そう言ってみる香は小走りで門の方まで向かうとみる香をじっと見つめるバッド君に「あれ、どうしたの?」と尋ねる。
あまりにも見つめられるとこちらの顔が赤くなるためそろそろ視線を外してほしいところである。
するとバッド君は僅かに頬を赤らめながら声を発した。
「みる香ちゃんいつもと違うね、可愛いねえ」
そう言って柔らかい笑みを向けてくる。みる香はドッと全身から熱を感じた。そして瞬時に心臓は高鳴り出す。
照れ隠しにみる香は「あ、新しい服買ったから着たかったの!」とでまかせの嘘を言う。この嘘は彼にはバレているかもしれない。
バッド君は特に深掘りすることはなく「そっか」と声を返すとみる香の髪型にも目を向ける。
「この髪型も凝ってるね、みる香ちゃん器用だなあ。よく似合ってるよ」
そんな褒め言葉に褒め言葉を重ねてくる。
みる香の赤面ぶりと心臓はもはやピークに達していた。「褒めすぎだよ!」と赤面を隠すことが出来なくなったみる香は投げやりにそう返すとバッド君は「あれ照れてる?」と言いながらみる香にそっと近付いた。
「だって褒めるところが多いからさ」
そして再び爽やかな笑みを向けると「じゃあ行こうか」と言って歩き出した。みる香も彼に続いて足を踏み出す。
朝からこんな調子で、自分は一日持つのだろうか。しかしその事実が、とても嬉しかった。
(本当にデートみたい)
そんな事を考えながら彼の無防備な手に目を向けてみる。繋いでみたいと思う気持ちは強く、しかしそんなことは許されないだろう。最悪、彼の方から契約破棄を申し出られるかもしれない。
好意を向けてくる女の子に対して、バッド君は非情なところもあった。最近はそのような印象が特に強い。
理由は分からないが、彼に告白をした女の子は揃いも揃って有無を言わさず振られたと口にするからだ。
その情報は女好きでプレイボーイなバッド君とは思えなかった。彼は好みの女の子以外とも付き合うことがあると契約当初に本人が話していたことがあったからだ。
だから何故、彼が女の子の告白を全て断り、一人も彼女をつくらずにいるのかは謎なところである。
みる香にとっては嬉しくもあったが、その事実は自分にも同時に当てはまるのだから複雑な気持ちは変わらなかった。
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