第三十六話『真冬の話』

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第三十六話『真冬の話』

 冬休みは短い。しかしみる香の予定は盛りだくさんだった。  ある日は檸檬達とスケートに出かけたり、ある日は桃田とショッピングをして楽しんだ。みる香の冬休みはとてつもなく充実していた。  バッド君とは年末まで会う約束をしていないため会うことはできなかったが、何の変哲もないレインがほぼ毎日届き、それに喜びを感じていた。  檸檬達と撮った写真を送ると彼は可愛いねと返事を送ってくる。  皆のことを言っているのだろうと思っていると『みる香ちゃんの事だからね』と追加のメッセージが送られてきた。  これには動揺したが、友達として可愛いと言っているのだと思い直し、素直にお礼のスタンプを送り返した。  バッド君の褒め言葉は好きな人からというのが大きく、みる香にこれでもかと言うほどの喜びを与えていたが、友達にそこまでベタ褒めする事は普通であるのだろうかと考えることも増えていた。 (明日……あっという間だな)  みる香はカレンダーを見るとついに明日が年末の大晦日であることを再確認する。  待ち焦がれていたこの日を、彼と過ごせる最初で最後の大晦日を、期待せずにはいられなかった。
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