第三十六話『真冬の話』

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 年末年始は颯良々の家で過ごす事になった。みる香の母が子どもだけで、外で年越しをするのは危険だからと反対したのだ。  心配する親の意見に背くことはできず、代わりに友達の家であればどうかと提案したところ案外すんなりと了承してくれた。  颯良々の家は規模の大きな家として有名なことから母も知っており、大人もいるなら安心だとゴーサインを出してくれたのだ。  元々颯良々の方からうちでどうかと話を出されていたため、お言葉に甘えることになった。  いつものメンバーは集まらず、星蘭子と莉唯は来れなかった。彼女達の家は家族内で年越しをする決まりがあるからと泣く泣く断っていた。未成年である以上はそういった意見も少なくないだろう。  そして桃田にも声をかけようと思ったが、バッド君に彼氏と過ごすことを聞き、誘うことは止めていた。彼女に断らせるのは申し訳ないと思ったからだ。  そのため今回は檸檬、颯良々、バッド君、そしてバッド君の友達だという男の空宗(そらむね)(こん)の面子で年越しをすることになった。  バッド君に男の友達がいることは勿論知っていたが、普段から女の子といる印象が強かったせいか彼が男友達を呼んだ時は驚いたものだ。  二人を呼んだ理由はバッド君が男一人で寂しいからだそうだ。そんなタマでもないだろうにとは思うものの、人数が増えることにみんなから反対の声はなくそのまま追加メンバーを加えて年越しをすることになった。  同じ室内では数人の家政婦がその場で待機していた。颯良々曰く、こういう行事の時はいつも何かあった時のために家政婦達が待機をしているようだ。  その話を聞いたみる香はまるで漫画の世界のようだと思った。颯良々の家はいつも驚く話が多い。そう思いながら年末の時間を楽しむ。 「そろそろ来るかな」  颯良々がそう口にした途端にインターホンの音が家中に鳴り響いた。  何かと思っていると颯良々は楽しそうに「ピザ注文した」と報告をしてくる。大晦日にピザは盛り上がるだろうと思って予め注文してくれていたようだった。  全員嬉しそうに歓声をあげると数人の家政婦がピザを持ってこちらにやってきた。  豪華なことに八枚のピザがテーブルに並べられ、家政婦が別で用意したサラダも食卓へ出されると食事の時間が始まる。  みる香は興奮した檸檬と二人でどれを食べようか悩みながらその時間を楽しんだ。
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