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彼はみる香に手渡した手袋からそっと手を離すとそんな言葉を漏らして柔らかく笑った。その温かくも優しい笑みはみる香の速まる鼓動を更に加速させる。
みる香は再び照れ隠しに「勘違い?」と声を出すとバッド君はうんと言葉を返した。
「俺ね、君の事、ただの契約者だとは思ってないよ」
「え……」
「君のこと、特別に思ってるんだ。特別な存在、普通とは違う凄く特別な………もちろん、友達としてね」
「…………」
みる香はバッド君の予想外の台詞に言葉を失う。嬉しい。嬉しすぎて、うまく言葉が出てこない。しかしバッド君はそのまま言葉を続けた。
「これは本当の話。これだけは知っておいてほしいな」
バッド君は優しくみる香を見下ろすと自身の人差し指を口元に当ててそう告げる。
彼の一つ一つの動作に、視線に、瞳に、心臓の音が煩くなる。まさかバッド君からこのような特別宣言をされるとは思いもよらなかった。
たとえそれが友達の意味だとしても、十分すぎるほどにみる香の気持ちは昂っている。
(記憶を消されても…この言葉だけは忘れたくないな)
そう願ってしまうほどに、嬉しさが込み上げていた。そんな夜であった。
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