第三十七話『やっておきたい事』

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 そんな日々を過ごしていくうちに一月は終わった。本当に早い。だが悔いはなかった。後悔がないように一日一日を過ごしていたからだ。  そしてある日の放課後、檸檬と颯良々の三人で寄り道をしている際中に、とあるコーナーを見つけてみる香は足を止めた。 「バレンタインまでもう一ヶ月もないんだ…」  足を止めたみる香がそう声を漏らすと颯良々はこちらが見つめている先に目を向けて「そろそろだね」と言葉を付け加えた。  そう、もうすぐバレンタインなのだ。  バレンタインコーナーには多くの女性が商品を選び、楽しそうな雰囲気を醸し出している。 (バッド君に渡したいな)  友達ができたら絶対にやりたい行事としてバレンタインは意識していた。友達と互いに用意した友チョコを配り合う姿をこれまでに何度も想像してきたのだ。  それが今年は、友チョコと――本命チョコの両方に変わっていた。  二人と同じくバレンタインコーナーに目を向けた檸檬は駆け足で陳列棚の方へ向かうと「近いうちに買おうと思ってたんだよね〜今日買っちゃおうっと」と言ってラッピングを選び始めた。  その様子を見ていたみる香と颯良々も檸檬に続くように敷地内に足を踏み入れると三人で店内を歩き回る。  ラッピングの包装を選んだり、何を作って渡そうか悩んだりするこの時間がとても貴重に感じた。そして何より、楽しかった。 「森村ちゃんは半藤にもあげるの?」  唐突に檸檬がそう聞いてきた。他意はないのだろう。バッド君とみる香の普段からの仲を知っているから気になったようだ。 「うん、男はバッド君だけだけどあげようかな」  そうして念のため「勿論友チョコだよ」と付け加えると檸檬は笑いながら「分かってるって!」とみる香の肩を叩く。そんなやりとりも楽しく思えた。
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