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「檸檬ちゃんとさららは本命あげるの?」
せっかくなので二人にも尋ねてみると檸檬は顔を赤らめながら、颯良々はいつものような顔でそれぞれ答えた。
「あげようかな」
「本命今いないから友チョコオンリーだよ」
「おお〜……」
檸檬の言葉に驚き、颯良々の言葉に納得をする。
みる香と颯良々は檸檬の方へ向き直ると彼女に誰にあげるのか質問をする。
最近は檸檬から好きな人の話をあまり聞いていなかったため、気になるところでもあった。
すると檸檬は「実はさ〜」と恥ずかしそうに言いながら彼女が計画していた事を二人に告げてきた。
「バレンタインにずっと告白しようかなって思ってたんだよ」
相手は檸檬と仲良くなりたての頃に好きな人ができたと言っていた男だった。半年以上経っているがその間もずっと彼を想っていたみたいだ。
彼とは個人的に遊ぶ事はなくても連絡先は交換しており、時々話すことも少なくないらしい。
檸檬は両想いかは分からないが賭けてみたいとそう話していた。そんな話を聞いてみる香は檸檬に共感する。
(バッド君と私の場合は……両想いじゃないって分かってるけど、でもなんか分かるな)
檸檬が今想い人に恋焦がれている感情をみる香はよく理解できた。もう今は当初彼女の恋バナに共感ができずどういう感情なのかと不思議に思っていた自分ではないのだ。
今では心の底から檸檬の気持ちを理解し、応援することができる。
「檸檬ちゃんならきっと大丈夫だよ! 頑張って!!」
「森村ちゃんありがとう〜! いい報告ができるといいな」
「檸檬に彼氏できたら私ら寂しくなっちゃうなー」
「ジマちゃん止めて! 棒読みなのバレバレだから!」
「あはは、さららの名演技だ」
そんな会話をしながら三人で笑い出す。
来年になったらこの恋心は忘れてしまうのだろう。だからこそ、今感じるこの共感や想いの全てを、存分に味わっておきたい。
みる香はそう胸に秘めながらバッド君へ渡すチョコのラッピングを考えじっくりと選び始めた。
第三十七話『やっておきたい事』終
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