31人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
放課後になり、トイレを済ませてから帰宅しようと廊下を歩いていると急に目に痛みを感じた。ゴミが入ったようだ。
しかしあまりにも痛すぎるせいか涙が出てくる。そのまま目を擦っているととある声が耳に入ってきた。
「あれ、みる香ちゃん何してるの?」
バッド君だ。彼は困惑した様子でみる香に近づく。
そしてやけに珍しく取り乱した様子で「え、泣いてる!? どうしたの!!?」と尋ねてきた。
痛みのせいで結構な涙を零していたみる香はそのままの状態で「目にゴミが入って痛いだけだよ」と返すとすぐに「擦っちゃダメだよ」と手を掴まれる。
「目が傷ついちゃうから止めてね? これ使って」
バッド君はそう言ってハンカチを渡してきた。彼にハンカチを借りるのは三度目だ。いつもハンカチを常備しているバッド君は衛生管理がしっかりしている。
そんな事を思っていると目の痛みが消えていることに気がついた。
「あれ、治ったかも」
「ほんと? あ、待ってみる香ちゃん、まつ毛が瞼の下にあるよ」
そう言って彼はみる香に近付くと「じっとしててね」と言ってみる香の瞼に触れてきた。どうやら黒目にまつ毛が入って痛かったようだ。
「はい、取れたよ。さっき手洗ったばかりだから安心してね」
そう言って爽やかに笑うバッド君を前にみる香は少し気恥ずかしくなる。
数秒とはいえ距離が一気に縮まったのだ。緊張しないわけがなかった。
気持ちを逸らすためみる香は思いついていた言葉を彼に放つ。
「あ、ありがと……バッド君、珍しく取り乱してたね。意外」
するとバッド君は一瞬無言になるとそのまま自身の首筋を触りながらこう口にした。
最初のコメントを投稿しよう!