第三十八話『バレンタイン』

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 みる香は何が起きているのか分からずとりあえず彼の名を呼んだ。  しかしバッド君はみる香よりもひと回り大きいその身体でこちらの全身を包み込み、そのまま動かない。  彼の大きな手がみる香の髪の毛を優しく撫でており、その感触がどこか気持ちよく、しかし羞恥心に駆られてもいた。みる香の心臓の音は大きくなるばかりで一向に彼は離れてくれそうにない。  パニックになりかけていたみる香は「ちょ、ちょっとどうしたの!?」と大声を上げるとようやくみる香から身体を離してくれた。  嬉しいようなもう少し今のままでいて欲しかったようなそんな矛盾した心を必死で追い払い、みる香は言葉を投げた。 「と、友達なのに何今のっ!?」  みる香の頭は混乱し続けている。顔は真っ赤どころではなく最高潮に真っ赤っかである。鏡を見なくてもそれだけは理解していた。  するとバッド君はとんでもない言葉を口にする。 「あはは、友達のハグだよ。だけど急すぎたね、ごめんごめん」 「友達にハグって……同性じゃないし外国じゃないんだからおかしいと思う」  みる香は未だに真っ赤な顔で俯きながらそう言葉を放つ。どう考えてもその意見は納得ができない。  そう思っているとバッド君はまたもやとんでもない理論を口に出してきた。
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