第三十九話『日常』

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第三十九話『日常』

「彼氏、できちゃいました……!」  翌日になると檸檬はいつもよりも口元を緩ませながらそんな嬉しい報告をしてくる。どうやら告白が上手くいったようだった。 「わ〜!! おめでとう!!!」 「檸檬に彼氏か〜勇気出したからだね、おめでとう」  みる香と颯良々はそれぞれお祝いの言葉を発すると檸檬は嬉しそうにありがとうと言い、昨日の出来事を話してくれた。  檸檬は終始嬉しそうに話しており、それを聞いているみる香も心が温まった。  友達の幸せを喜べている自分にも嬉しさは増し、幸せな話はどれだけ聞いても飽きることなく、夢中で彼女の話を聞いていた。 「みる香ちゃん」  休み時間になると桃田がみる香を呼び出した。  彼女の声ですぐに駆け寄ったみる香は桃田と話せることが嬉しく自然と笑みが溢れる。  桃田は特に用はないのだが少し話したくなったのだと嬉しい事を言ってくれた。彼女と話に花を咲かせながらみる香はふと考える。 (桃ちゃんとも、来年はこうして話せないんだ)  桃田にとってみる香がどれほどの存在であるのかは定かではない。  だが、こうして休み時間に会いにきてくれる。そういう存在になれたことがみる香は嬉しかった。  誰がなんと言おうと、みる香が彼女の記憶を失おうと、桃田はみる香の大切な友達だ。  そう思いながら、みる香は桃田との談笑を楽しんだ。
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