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「…え?」
すると唐突に、バッド君はそんな言葉をいつもとは違った雰囲気を纏って口にした。
みる香は思わず聞き返す。
そんなみる香の表情を余裕のなさそうな顔をして見つめてくる。
「君は無自覚なんだろうけど」
言葉を口にしながら彼は自身の手で首筋を触っている。少し、いつもと空気感が違っていた。
「みる香ちゃん時々、ドキッとする事言うから……」
少しむすっとしたような彼の表情は何だか新鮮だった。だがその一言にみる香はすぐに「そ、そんな事言わないよっ!」と言葉を返す。
よく分からないが、勘違いをされている気がしたからだ。しかしバッド君の表情は変わらぬままでみる香を見つめたまま言葉を続けた。
「……男はそういう一言でコロッと落ちちゃう事もあるんだよ」
その言葉はみる香の鼓動を速くさせた。そんなはずはないと思いつつもみる香は仄かに赤らんだ顔で彼に問いかける。
「…バッド君も……?」
するとバッド君は一度離した目線をこちらに戻してくる。
いつもと違う爽やかではない視線は彼がやけに大人びているようなそんな感覚を覚える。
「友達として可愛いとは思っちゃったよ。だから……気をつけてほしいな」
その言葉でみる香の心臓は一気に跳ね上がった。ドキドキという心音がこれでもかと言うほどに煩い。
心臓が高鳴る中、返す言葉を必死で考えていると「トイレ珍しく混んでた」という颯良々の声が聞こえてきた。彼女の登場にみる香は安堵する。
バッド君はもう先ほどのような表情をしておらず、いつの間にかいつもの爽やかで涼しげな顔に戻っていた。
みる香は僅かにまだ煩い心臓の音を誤魔化すように颯良々に唐突な話題を振ってみせると三人でそのまま話を続けた。
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