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その後も充実とした学校生活を送っていた。
放課後になると檸檬や颯良々とカラオケに行ったり、休みの日には星蘭子と莉唯も加えた五人で映画を見に行ったり、様々なスポーツを楽しめるレジャースポットへ向かってみんなで遊びもした。
運動が苦手なみる香でも皆と過ごすことでとてつもなく楽しい思い出を作ることができた。
何も予定がない日には時々桃田から連絡が来ることもあり、みる香の家で恋バナをしたり桃田からバッド君の話を聞いたりと女の子同士での楽しい女子会をすることもできた。
そして平日休日に関わらずバッド君から突然テレパシーがきたり、レインが届いたりすることは自然と増えていた。
みる香はそれがくる度に彼に特別な友達だと言われた言葉を改めて実感し、それを嬉しく感じていた。
彼への気持ちは変わらず桃田以外には話せずにいたが、何かあった時にはいつも桃田が話を聞いてくれておりそれがとても心強かった。
バッド君への気持ちは高まるばかりであったが、気持ちを伝えない意志だけは変わらず持っていた。
叶いようがないこの恋を知っているのは自分と、話を聞いてくれる桃田だけでいい。それでいいのだ。
以前、桃田には気持ちを伝えないのか聞かれたことがあった。
しかしみる香は彼に友達だと思われている事、自分を男として好きにはならないでと忠告されていた事を説明した。
忘れてしまう恋だから、話したくないという理由は話せなかった。記憶の消去を知っている事だけは、絶対に誰にもバレたくなかったからだ。
言われないということはきっと、その話を躊躇われているのだ。みる香が悲しい思いをするのを予想して話せずにいるのかもしれない。
初めこそはなぜ記憶の消去を隠すのかと不思議に思っていたが、いつからかそう思うようになっていた。
バッド君が友達として、自分を好いてくれている事はこの数ヶ月で十分に体感していたからだ。
だからこそ記憶の話は記憶を消されるその日まで自分の中で閉まっておくつもりだ。
第三十九話『日常』終
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