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第四十話『ホワイトデーが終わる』
二月も短いせいか異様に早く過ぎていく。三月になると寒さは体感で二月よりは少し和らいでいた。しかしまだ明け方は寒く、防寒具は手放せなかった。
「寒〜い」
マフラーをぐるぐる巻きにした檸檬はそう言いながら教室に入ってきた。彼女の手には見慣れない手袋も身につけられている。
「おはよう! 檸檬ちゃんその手袋……」
「そう! 今朝貰っちゃった。ホワイトデーだって♡」
「わあ、よかったね! 檸檬ちゃんぽいし可愛い」
「でしょでしょ! ジマちゃんもみてよ!」
「うん、可愛いじゃん。いい彼氏持ったね」
「えへへ、そうそう〜」
そんな朝の会話で今日の学校生活が始まる。
檸檬はバレンタインの日に想い人である佐原嵐に告白をし、今も尚付き合っている。
それから二人はみる香や颯良々の前でも曝け出すほどのラブラブカップルとなっていた。
微笑ましい二人の姿にみる香は嬉しさを感じる。これが幸せのお裾分けというものなのだろうか。
檸檬との寄り道の回数は減っていたが、彼女は佐原と付き合うことになってもみる香と颯良々の事を蔑ろには決してしなかった。
これには檸檬がいかに心優しい友達であるかを実感させられた。
しかし付き合いたてである二人の時間も大事にしてほしいと同じ意見を通わせたみる香と颯良々は二人と寄り道をしようとついてくる檸檬に彼氏と過ごしてくるよう彼女の背中を押すことも少なくなかった。
こんなことでは友情は壊れないからだ。
みる香は檸檬が本当に幸せそうに佐原と歩く姿を見るのが好きになっていた。
「おはようみる香ちゃん」
そんな事を考えながらボーッとしていたみる香の頭上にポンと軽く手を乗せてきたバッド君はいつものように爽やかな顔で挨拶をしてきた。
途端にみる香は心の中が騒がしくなる。朝から好きな人に会えたことに身体が喜びを感じているのだ。みる香のウブさは未だに健在であった。
「おはようバッド君」
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