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みる香はそう返すと予鈴が鳴り始める。
バッド君は「また後でね」と笑みを溢すと自身の座席へと向かっていった。
そんな彼の姿を見つめながらみる香は心の中で彼に告白をする。
(好き……)
この心の中での告白は、一度や二度ではなく何度も行っている事だった。
想いを伝えられないのなら、この感情が消える前に何度でも言ってしまおうとそう開き直ったからだった。心に秘めていることには変わりないので、躊躇う要素はなかった。
(バッド君が心の中、読めなくて良かったな)
そんな事を思いながら何十回目か分からない心の中での告白を終えるとみる香は教室に飾られたカレンダーに目を当てる。今日は三月十四日で今はテスト返却日である。
終業式まで……あと三日だ。
彼との契約終了まで残り三日となっていた。
時間が経つにつれ、考えないようにしていたのだが残り三日となると考えないのは良くない。
みる香は教師の話を半分耳に入れながら残りの半分で思考を巡らせる。
できることなら残りの三日間はバッド君と過ごしたい。
だが友達でしかないみる香と三日間連続で過ごすことを彼はどのように感じるのだろう。
そう思うと怖くて言い出すことができなかった。
(でも)
そう、だからなんだという話だ。どうせ三日後にはみる香の記憶はバッド君を忘れる。それなら――――
(当たって砕けよう)
そう決めたみる香はバッド君に唐突なテレパシーを送り出す。もう怖いからと、逃げるのはなしだ。
『バッド君』
『みる香ちゃん、良かったら今日の放課後遊びに行かない?』
(えっ!!?)
みる香がテレパシーを送りかけた矢先のことだった。
偶然にもテレパシーが重なった。
こんなことは初めてだ。驚きと同時に同じ事を考えていたのだと嬉しさが増す。
彼がこうして誘ってくれるため、バッド君にとってもみる香は特別な友達だと自惚れることが出来ていた。
(でもそれもあと三日なんだ)
『あれ、みる香ちゃんも今テレパシー送った? ごめん遮っちゃったね』
一瞬切ない気持ちになり始めたみる香はバッド君のテレパシーを受けて気持ちをすぐに切り替える。
そしてそのままテレパシーを送り返した。
『平気! 私も誘おうと思ってたんだ! クレープ食べようよ』
『本当? それは嬉しいなあ。そうだね、クレープ食べに行こうか』
そうしてしばらく彼とテレパシー上で会話をした。授業中であるというのにだ。だがこんな甘酸っぱくて幸せな時間はもうこれきりなのだ。
みる香はバッド君とのやり取りを噛み締めながらテレパシーを送り続けた。
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