30人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
「はい、これお返しだよ」
放課後になると生徒達は教室からいなくなり、バッド君とみる香の二人だけになる。
トイレに行っていたらいつの間にかバッド君以外の生徒は皆消えていた。
みる香は待たせてごめんねと言うとバッド君は全然待ってないよと返しながら唐突にそれを目の前に差し出してきたのだ。
「え、これって……」
それは白色の包装に綺麗なピンク色のリボンが施され、可愛らしくラッピングされたものだった。みる香は頭の思考が停止する。
バッド君はそんなみる香を見て笑い出した。
「あはは、想定外のことがあると固まっちゃうのは相変わらずだねえ」
そう言ってみる香が受け取らないそれを持ち上げてみせると再び言葉を発してきた。
「バレンタインのお返しだよ。ホワイトデーって言えば分かるよね?」
「な……」
みる香はようやく言葉を出す。
「返さない主義じゃないの!?」
バッド君は貰えるものは貰っておくスタンスだと自分でそう言っていた。だから全く、そう本当に一ミクロンも期待などしていなかった。
しかしバッド君は微笑みを見せながらこう答えてきた。
「それは関わりの薄い人間に対しての話。君とは関わり、深いでしょ?」
そう言ってみる香の頭を軽くポンポンと二回叩きながら「友達だもんね」と笑顔を向けてきた。
(友達でも……嬉しすぎる…)
予想外の展開にみる香はいまだ混乱していたが、それでも彼の好意は嬉しかった。義理だとしても十分だ。
記憶を消す相手に、ここまでしてくれるバッド君が改めて大好きになった。
最初のコメントを投稿しよう!