第四十一話『友達にお別れ』

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 目が覚める。アラームはいつの間にか鳴り止み、静まった部屋で一人、汗だくの半藤がベッドの上で仰向けになっていた。 「………………」  嫌な夢だ。だがこの夢は決して他人事ではない。これから起こる出来事だ。それは分かっていた。ずっと、ずっとそうしてきた事なのだから。  こんな感情を抱いたのは異例で前例のない出来事だ。それは自分自身がよく分かっており、よく、理解していた。 「あの子達がどうしてるかなんて、一度も考えた事なかったのにな」  半藤がこれまでサポートしてきた人物には思い入れや情など一度たりとも湧いたことはなかった。最後の最後までそれは変わることがなかった。  自分を忘れた彼女達に対して何かを思うことも感じることもなかった。それが当然だった。  人間達は少なからず半藤への友情、恋情などを抱いていたようだが半藤にそれらの感情は一切なかった。  それは自分が情の湧きにくい天使であるのと、自分の中で決めていたルールに則っていたからだ。それが普通であり、本来の天使であるのだ。 「参ったな……ほんと」  半藤はそう言いながらも本心ではみる香に対する気持ちが特別なものであるという事実に喜びを感じている。彼女への気持ちを自覚してから自分は変わったと認めている。 「今日か……」  しかし現実は残酷だ。今日半藤は彼女を、みる香を――――森村みる香にしなければならないことがある。  それは決して個人的な感情でどうにかできるものなどではなく、規則なのだ。逆らうことは許されない。  半藤は台所へ足を運び一杯の水を胃に流し込むとそのまま小さく息を吐いた。 * * *
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