第四十二話『契約の終わり』

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「俺の本当の名前、いちるって言うの」  瞬間、彼の身体中から数多くの神秘的な光が放出されキイィィンという聞き慣れない音が耳に響いた。  その様子を目の当たりにしたみる香は咄嗟に彼に問いかける。 「今の何っ!?」  するとバッド君は目を伏せながらその問いに答えた。 「降格した。俺が本名名乗ったから」 「な……」  そうなのだ。今の光も気になるところであったが、彼は自分の本当の名だという名前をみる香に教えた。  本名を人間に知られれば降格をするというのは彼が一番最初に言っていた重大な事だったはずだ。それを何故……。みる香は感情的に言葉を発していた。 「なんでそんな事……!! 私に教えたら降格するって自分で言ってたじゃん!!!」  思わず彼を責め立てる。昇格どころか降格など、ましてや天界での降格はとてつもなく不名誉なことであるのだと彼は言っていた。全部、彼が言っていたのだ。  だというのに何故、これから記憶を消すみる香に降格してまで本名を名乗るのだ。理解できなかった。 「俺さあ」  するとバッド君はそんなみる香に慌てる様子も見せず再び口を開いた。そしてそのまま言葉を続ける。 「サポートする相手を選ぶ時の条件が三つあってね」 「え?」 「マイルールってやつなんだけど」  バッド君は唐突にそんなことを話し始めてきた。彼は人差し指を立てながらやけに神妙な顔をして言葉を続ける。  突然の話題の切り替えに訳がわからないみる香は困惑したまま彼の言葉を聞いていた。 「一つはぼっちな子。二つはコミュ障の子」  これは今までに彼から聞いたことのある情報だった。  それが何なのかと不思議に思いながら聞いていると次の彼の言葉でみる香の目は見開かれた。 「三つ目は、絶対好きにならない子」
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