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第四十三話『覚悟』
目を覚ますと見慣れた天井がそこにあった。自分の部屋だ。何だかとても不思議な感覚である。
みる香は布団から起き上がるとカレンダーに目を当て日付を確認した。
「今日から春休みだ」
そうだ。昨日は終業式で今日から楽しい春休みが始まる。檸檬や颯良々と遊ぶ約束もしているのだ。
スマホを開くとみる香はレインのトーク画面を見る。
昨晩、檸檬と颯良々が春休みについての連絡をグループトークで送ってきていた事を確認し、慌てて返事を返す。昨日の記憶が朧げだが、すぐに寝てしまったようだ。
みる香は返信が終わると自然とふふっと笑みを溢した。友達に慌てて返事を返す姿は何だか新鮮だったからだ。
(去年までは考えられなかった事だなあ)
そう、去年までみる香には友達と呼べる存在が一人もいなかった。
しかし今年は運気が上昇していたのか、トントン拍子に五人の友達ができたのだ。本当に幸せな事だった。
「春休み、満喫しようっと」
みる香は大きく伸びをすると部屋着に着替え、朝食を食べに一階へと下りていった。
「みるこっちこっち」
「さらら〜おはよう!」
待ち合わせの駅で颯良々を見つけるとみる香は駆け出す。今日は三人で映画を見に行く約束をしていた。
檸檬の姿はまだ見えないが、もう少しすれば来るだろう。
全員好きなジャンルの映画が異なっており、何を観るかで悩んだ三人は一日映画だけを見ようと異例なことを提案し、今日は映画を三本見るつもりだった。
みる香の好きなアクション、檸檬の好きなコメディ、颯良々の好きなホラーを順に観ていく予定だ。
アクション以外の映画を見た事は今までほとんどなかった。友達がいなかったからである。
しかし去年も映画を見た覚えはたくさんあり、アクション映画を誰かと熱く語り合ったような気もするのだが、きっと夢で誰かと語り合ったのだろう。
アクションを語り合える友達はみる香の友達の中にいないからだ。
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