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第四十四話『情』
春休みは充実した時間を過ごした。
去年とは比べ物にならないほど幸せな日常だった。
宿題は最終日まで残ってしまったが、何とか始業式までには終わらせることができていた。
宿題をしている際に羽のついたシャープペンシルが目に入り、これはどこで買ったものであったかと不思議に思った。
こんなに可愛らしいデザインを自分が買うだろうかと疑問に思った。
だけどとてもお気に入りのものだったような、そんな気がする。
そしてそれはシャープペンシルに限った話ではなく、引き出しに大切に仕舞われていた可愛らしいラッピングもそうだった。
明確に言えば大切さの意味合いが違う気もするのだが、そもそもの話この二つが大切なものなのかどうか正直よく分からない。
そして不思議なのは、自分の部屋で誰かと勉強会をした気がするという事だった。これは可笑しな話である。
何故ならみる香は誰も自宅に呼んだ覚えが無いのだ。
勉強会をする時や遊ぶ時は決まって檸檬や颯良々の家に行っていた。みる香の家は、二人の家より少し狭いからだった。
だからこそこんな感覚は違和感しかないのだが、そんなことを考えていると時間がどんどん過ぎ去ってしまう。
切り替えることにしたみる香は頭の中を宿題に集中させ、目の前の宿題に取り掛かっていた。
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