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始業式は午前中で学校から帰宅できる。特別な日だ。
下校時間になると檸檬と颯良々は部活に、莉唯は用があると言って颯爽と学校を後にしていた。
みる香ものんびり帰ろうと下駄箱まで足を運ぶ。
友達は皆、部活などがほとんどで誰かと一緒に帰宅したことはあまりなかった……はずなのだが、なぜか不思議と誰かと一緒に帰っていた事が殆どだったようなそんな感覚がある。これは本当に不思議であった。
(でも仲が良い子としか帰る事はしないしなあ)
友達ができてもコミュ障はまだあった。だからそこまで仲の良くない子達といきなり一緒に帰るという選択はみる香にはなかったのだ。
これまで一緒に帰った事があるのは遊んだ事のある友達とだけだった。
だからこそ、この違和感は不思議で謎である。
(まあ、夢でも見たのかな)
そう思うことにして自身の下駄箱の引き戸を開けると、そこには一通の手紙が置かれていた。
『森村みる香さんへ 屋上へ来てください』
差出人不明のやけに綺麗な字体で書かれた文字は妙に懐かしさを覚えた。しかしこの手紙の差出人に心当たりは全くない。
ラブレターだと素直に喜ぶべきなのだろうか。いや、もしそうであったとしても異性に興味のないみる香には喜ばしいことではない。
だが、この手紙を無視するのは何だか嫌だった。罪悪感からではない。自分が行きたいとそう思うのだ。
何故かは分からないがその気持ちは不思議なことに悩む余地もないほど大きなものだった。
みる香は手紙を丁寧に鞄の中へ仕舞い、屋上へと足を向け始めた。
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