チャリンコ

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「・・・・・・」 あたし、如月 萌(きさらぎ もえ)は黙ったままだった。 「何黙っているんだよ、迎えにきたんだよ 早く乗れよ」 そういう奴は、日向 悠太(ひむかい ゆうた)。 あたしの幼馴染で、隣の魚屋の息子で 世界的なサッカー選手なのに 地元のサッカーチームクラブのネプチューンから 頑として移籍しようとしない。 クラブネプチューンも一部リーグで活躍しているから それなりにお金がある。 よって、そこでエースストライカーをしている 日向 悠太は結構な高給取りだ。 そんな奴が自宅への最寄り駅の出口で あたしを待ち構えていて 乗っているのは・・・チャリンコだった。 「そこはフェラーリとかポルシェとかじゃないの?」 あたし、如月 萌(きさらぎ もえ)は 今時それもどうかなと思いつつ、取り敢えず尋ねてみた。 「は?今時そんなの乗ってどうすんの? しかもこの田舎で誰にみせびらかすんだよ。 第一、そんなの乗ってみろ。 小中高におまけの幼稚園時代のにわか友達とやらから 乗せろ乗せろと言われて、 ブチ切れて料金メーター設置するわ。 車だったら、うちの魚運ぶ軽トラがあるが、 親父が乗り回しているから チャリンコしかなかったんだよ。 何か問題ある?」 「あんた、金持ちじゃないの」 あたしはどうでもいい質問をする。 すると悠太は胸を張って言い放った。 「ああ、サッカーで稼いだ金は貯金している。 それもこれもお前と俺達の子供のためだからな」 あたしは仕事帰りの疲れた身体が 崩れ落ちそうになるのを必死でこらえ 踏ん張って叫んだ。 「あたしはあんたと結婚しないから!!」
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