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「どんぶりは1つしかないから、ルナがこれ使ってね。わたしはこの鍋で食べる」
「いいよ、あたしは」
「いいの! お客様なんだから。あと、良かったらロールキャベツとかもあるんだけど、食べる?」
人に食べてもらおうと作ったものだ、食べてもらえるなら片づけてほしい。とはいえファミレスに行ってたみたいだし、これからラーメンを一緒に食べる。無理だったら、わたしが食べよう。
ルナが――誰かが一緒にいる場で食べたら、自分で食べたとしても朝になってから食べ始めるよりも傷が浅い気がした。
「サンが作ったの? 食べる食べる」
「食べて。彼氏どうせ食べに来ないから色々余ってるんだよ」
「何でも食べるよ。大食いだから余裕」
彼氏さんは食べ損ねて残念だねと苦笑しながらルナが付け加えた。残念がってくれたらいいけどね。最近おいしいと言ってくれたのはいつだったか、思い出せないのだ。そのくらい言われていない。
好きだと言われて作る回数が増えて、自分の納得いくものが作れるようになったのに。
「食べてくれたら頑張って作ったわたしが救われるよ、ありがとう」
冷蔵庫からいくつかタッパーとソースを出して、ロールキャベツをレンジで温める。ポテトサラダとしめじの甘辛和えはこのままだそう。
座ったままいてくれて良かったのに、さっと立ち上がって「手伝うよ」と声をかけてくれた。2つのタッパーとソースを渡して、運んでもらうことにした。
「ソース何に使うの?」
「ルナはかけても大丈夫な人? わたし、ポテトサラダにソースかけるの好きなの」
「へー、やったことないけど全然大丈夫だよ」
「濃い味になっちゃうんだけどね。今はもう気にせず食べてやれって気分だから」
「その気分、今のあたしもおんなじ」
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