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ふふっと笑ったルナの唇が艶めいた。ルナがいてくれるおかげで、暗い気持ちで眠れずに夜を明かすことなく済んだ。
これは楽しい夜の始まりだ。どちらかというと夜の終わりに近かったけれど、わたしたちの夜はここから。
お酒はほどほどにしておきなよという忠告をそれなりに受け流して、好きなだけ食べて飲んで、しゃべって。楽しいとおいしいに満たされた。
始発の時間はあっという間に来たけれど、まだ暗いからという理由でルナを引き止めて一緒に映画を見た。
ルナがこれさえあればワインがおいしくなると教えてくれて買ったオレンジジュースで割って、乾杯をした。もうひとりでもワインを消化できるようになってしまった。
「ルナの指先も、女性っぽくてすごい素敵だよね。わたし、全然ちゃんとしてないな」
画面に映る俳優さんの綺麗な指先。ルナは綺麗なボルドーのネイルをしている。どちらも、何もしてないくすんだわたしの爪とは大違い。
「……褒め言葉として、“女性っぽい”って言ってくれてると思うけどそれってその前置きがなくても成立することが多いよね」
うわ、最低だ。失言だ。隣を見れば、まつげを伏せたルナが気まずそうな顔をしていた。
そうだよね、女性っぽいなんて言葉はいらない。わざわざ言う必要のないことを付けて言ってしまった。
「ごめん。すごい素敵だねに訂正させて」
「こちらこそ、うざくてごめんね。サンはそんなつもりないだろうけど、男がこういう格好をしてるってフィルターを通して見られることが多いから。“男性のわりに女性っぽいね”って、嫌味に聞こえる気がしちゃうの」
「気をつけるね」
「ううん、受け取り方の問題もあるから。酔っ払いが何か言ってるなくらいで聞き流しちゃって」
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