ラーメンは塩派

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 軽い口調で笑うルナを見て、首を横に振った。フィルターを通してみてるつもりがなかったのは確かだけど、改めて考えるとがっつりフィルターを通してルナを見ていたと思う。受け取り方の問題だけのはずない。  わたしはワイングラスに口をつけて、甘酸っぱいワインを流し込む。テーブルに置いてから小さく息を吐いた。 「無意識にフィルターを通して見ちゃってる部分があったと思う。新しいフィルターに取り替えないと。古いままいたら、視野が狭いまんまだよね」 「そう言われると、あたしも“男がこういう格好をしてるからそんな言葉になったんだ”ってフィルター通して見ちゃってた気がする。サンみたいに、そうじゃない人だってたくさんいるよね。今、それだけでもすっぱり取り替えちゃう」  ノリノリでルナが指でわっかを作って、その穴をのぞき込んだかと思えば、どこかに投げるしぐさをした。どうやら、古いフィルターを投げ捨てたつもりらしい。  やらないのかというように見つめられたので、同じようにやると拍手を浴びた。何だこれ。気が抜けて、ルナに倒れこむようにしてクスクス笑った。  聞こえてくる音楽が大きくなって、映画に目を戻す。 「この映画、こんな感じなんだね。ずっと気になってたんだけど、見たことなかった」  名探偵が12人の犯人による犯行だと明かすシーン。彼がこうしたミステリーは好みじゃなくて、付き合ってからはわたしも遠ざかっていた。 「小説が好きだけど、わたしも映画は初めて。日本版のドラマは見たよ。面白かった」 「へー。今度見てみようかな」 「ぜひ見て」  今見てるのも、ひとりのときにゆっくり見返してみようかな。  日本版も探そう。これから、ひとりの時間が増えるのだ。自分が見たい映画をたくさん見てみよう。好きな相手に合わせるばかりで、自分のことを蔑ろにしていたかもしれない。
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