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「あっ」  ハッとして右手で口をふさぐ女子。どうして空気が凍ったのか。僕は呑気に、彼女は左利きなんだな、なんてくだらないことを考えていた。 「謝りなよ」 「ごめ、」  そんな泣きそうにならなくても。こっちが気まずい。というか何で謝っているのか皆目見当もつかない。 「大丈夫だよ、気にしないで」  とりあえずそう言ってその場を収めた。泣きそうな顔の女子はもう一度「本当にごめんね」と言って慌ててお弁当を片付け始める。食べかけのお弁当が蓋に隠れて見えなくなった。  僕の頭の疑問は消えない。  あの言葉のどこに謝る箇所があるのだろう。
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