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弾いた。
でも、今までと何か違った。何が?
答えに手を伸ばそうとしても、靄がかかって見えなくなってしまう。
もどかしい、はずだった。でも、今の僕にとってはそれすらどうでも良かった。
前より上手くたって下手だって、構わない。
だって僕はもう、
「すごい……」
「え?」
隣から声がした。楠田さんが真ん丸の目をキラキラさせて、僕を見ていた。
その煌めきが、僕を捕らえた刹那。
断片的な記憶。ピアノを弾く僕。父の膝の上で妹が楽しそうに手を叩きながら鼻歌を歌う。母親が僕に尋ねる。
『あなたのゆめは、なに?』
『ぼくのゆめは、おんがくで、だれかを笑顔にすること!』
答えた僕は、笑っていた。
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