好きな人

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「それで今どんな感じ?」 「どんなって?」 「彼氏よ彼氏」  百合華が不意にそう聞いてくる。  唐突に主語も無く聞くので一瞬なんの事か分からなくなる。 「別に変わんないよ」 「じゃあ仲良くやってるんだ?」 「まぁ、一応向こうの家族にはちゃんと恋人って紹介してもらった」 「え、そこまで進んでるの?」  思ったよりも進展していてびっくりした。  そして向こうの家族はΩだと知っているのか、どんな反応だったのかなど根掘り葉掘り聞こうとしてくる。  叶芽もあまり言いたくないと思いつつ、百合華に乗せられて包み隠さず全部喋ってしまった。  話しを引き出す話術は麻人と同様で上手い。流石兄妹だ。 「そう、まぁ認めて貰ったならいいわ。 でも貴方が柊家の息子だって事は知らないんでしょ?」  渚の家族は叶芽が名家の子息であるとは知らない。  いずれ言うつもりではあるが、タイミングが分からないし、何より渚の判断に任せるしか無い。  それに叶芽の方は渚を恋人と紹介すら出来ていない。  一度両親と会ったが、両親はただの友達としか思っていない筈。  それを百合華に相談すると、彼女はこんな事を言い出す。 「1回会ったなら兄さんは気付いてるんじゃない?」 「え?」 「だってカナメちゃんの事なら、誰も気付かないような些細な事も気付いてしまう人よ?」  そんな事を言われて叶芽は固まってしまう。  だって一度も父は、渚とはどんな関係だとか聞いてきた事はない。  しかし百合華は敢えて何も言わないんだろうと指摘する。  柊麻人とは心の奥底を隠す事が上手い男だ。  「兄さんはカナメちゃんから紹介して貰うのを待ってるのよ。 カナメちゃんの意思を最大限尊重したいのよあの人は」  父が知っているとは半信半疑ではあるが、ならもう渚を家に来てもらおうと考える。 「でも反対されたらどうしよう…… ねぇ、その時はユリ姉が説得してよ」  叶芽は百合華を味方につけようとそう頼む。 「それは、その彼氏とやらを見てみないと。 場合によっては葬り去ってやるわ」 「…………」  男運の無いくせに百合華は甥っ子の彼氏を品定めするつもりらしい。  何だか彼女が一番ハードルが高い気がして来たと、叶芽は内心頭を抱えた。 
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