Ωの存在

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 放課後、いつものように渚は教室を後にする。  靴箱へやって来ると、一人の男子生徒が他の男子生徒に囲まれているのを目撃する。  靴を入れ替えながら聞き耳を立てていると、思わず彼らへ視線を向けていた。 「まさかお前Ωだったなんてな。 欲情した顔マジヤバかったわ~」 「お前教室でヒート起こしてどんな気分?」  そう笑い声が聞こえる。  どうやらヒートを起こしたのは囲まれているあの男子生徒らしい。  囲まれているので姿が確認出来ないが、反論もせずただ縮こまっているのは分かる。  なんて卑劣な言動だと、渚は見ていられなくて彼らに肥を掛ける。 「ねぇ、そう言うの止めなよ」 「あ?……って、お前宮市っ!!」  どうやら彼らは渚の事を知っているらしい。  一度も同じクラスにはなった事が無いが、αである渚はこの学校ではちょっとした有名人だ。 「Ωだαだ、どうでもいい事グチグチ言って恥ずかしくない?」 「はぁ?んだよ、αだからって調子乗んな」 「聞いてた?そう言うのどうでもいいって。俺さ、性別で判断すんの嫌いなんだよね。 ほっとけってのウザい」  はっきりと言い放つ渚に気圧されたのか、いじめっ子たちはさっさと帰って行った。 「あの、あり…がとう……」  すると囲まれていた彼がか細い声で渚にお礼を言う。  叶芽よりも少し小柄な身長の彼ははにかみながら見上げてくる。 「いいよ。それよりヒート来たんでしょ?体は大丈夫?」  ヒートがあったみたいだし、体の方は大丈夫かと気になるが、今のところフェロモンは感じない。  おそらく抑制剤を接種したのだろう。 「うん、保健室で抑制剤貰ったからもう大丈夫」  抑制剤のお陰で今は何とも無いようだ。  だがまたあのいじめっ子達が彼を待ち伏せて入るかもしれない。  渚は彼の家の場所を聞いて、途中まで帰る方向が同じだからそこまでは一緒に帰る事にした。 「ありがとう……宮市君って優しいね」 「俺の名前知ってるんだ」 「当然だよ。宮市君は有名だから」  彼もαである渚の事を知っているらしい。 「あ、僕は百瀬充(ももせみつき)。 まさか宮市君と話せるなんて……嬉しい……」  彼、百瀬充はαである渚に密かに憧れていた。
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