301人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、いつものように渚は教室を後にする。
靴箱へやって来ると、一人の男子生徒が他の男子生徒に囲まれているのを目撃する。
靴を入れ替えながら聞き耳を立てていると、思わず彼らへ視線を向けていた。
「まさかお前Ωだったなんてな。
欲情した顔マジヤバかったわ~」
「お前教室でヒート起こしてどんな気分?」
そう笑い声が聞こえる。
どうやらヒートを起こしたのは囲まれているあの男子生徒らしい。
囲まれているので姿が確認出来ないが、反論もせずただ縮こまっているのは分かる。
なんて卑劣な言動だと、渚は見ていられなくて彼らに肥を掛ける。
「ねぇ、そう言うの止めなよ」
「あ?……って、お前宮市っ!!」
どうやら彼らは渚の事を知っているらしい。
一度も同じクラスにはなった事が無いが、αである渚はこの学校ではちょっとした有名人だ。
「Ωだαだ、どうでもいい事グチグチ言って恥ずかしくない?」
「はぁ?んだよ、αだからって調子乗んな」
「聞いてた?そう言うのどうでもいいって。俺さ、性別で判断すんの嫌いなんだよね。
ほっとけってのウザい」
はっきりと言い放つ渚に気圧されたのか、いじめっ子たちはさっさと帰って行った。
「あの、あり…がとう……」
すると囲まれていた彼がか細い声で渚にお礼を言う。
叶芽よりも少し小柄な身長の彼ははにかみながら見上げてくる。
「いいよ。それよりヒート来たんでしょ?体は大丈夫?」
ヒートがあったみたいだし、体の方は大丈夫かと気になるが、今のところフェロモンは感じない。
おそらく抑制剤を接種したのだろう。
「うん、保健室で抑制剤貰ったからもう大丈夫」
抑制剤のお陰で今は何とも無いようだ。
だがまたあのいじめっ子達が彼を待ち伏せて入るかもしれない。
渚は彼の家の場所を聞いて、途中まで帰る方向が同じだからそこまでは一緒に帰る事にした。
「ありがとう……宮市君って優しいね」
「俺の名前知ってるんだ」
「当然だよ。宮市君は有名だから」
彼もαである渚の事を知っているらしい。
「あ、僕は百瀬充。
まさか宮市君と話せるなんて……嬉しい……」
彼、百瀬充はαである渚に密かに憧れていた。
最初のコメントを投稿しよう!