Ωの存在

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 Ωの彼、百瀬充を助けた渚は途中まで一緒に帰る。  その道中、百瀬は自分がΩである事がバレて明日から不安だと吐露する。 「抑制剤、いつも事前に飲んでたけど、今日の分無くて……」 「それは何で?」  そう聞くと、百瀬は少し間を置いて自分の家庭環境を話し始めた。 「うち、母子家庭で……… お母さんに抑制剤買って欲しいって頼んだんだけど、多分忘れちゃってるんだ」 「は?忘れるってそんな大事な事忘れる?」  ヒートを起こしてしまったらどうなるか、親なら知らないわけが無いだろう。  なのに買うのを忘れるなんてあるだろうか? 「うん、でもお母さんは僕の事好きじゃないから……」 「……それって」  百瀬の両親はβだが、息子の百瀬だけはΩ。  それは渚と同じ境遇である。  しかし渚と違うのは、両親は百瀬を疎んでいると言う事だ。  親は数年前に離婚し、母親と暮らしているが、Ωである百瀬を面倒だと感じている。    母親は別れた元夫に百瀬を引き取ってほしいと相談していたが、断られて仕方なく一緒に暮らしていると言う。  そんな家庭環境を聞いて渚は言葉が出なかった。   「でも、宮市君はαなのに僕を助けてくれた。 Ωの事、嫌じゃないの?」  母親でさえ嫌がるのにと言うと、渚は少し考えた後、こう答えた。 「俺、Ωの子と付き合ってるんだ」 「え?」 「俺の恋人、Ω」  渚は恋人がΩだと告白した。  Ωに対して嫌な感情なんて無いと証明する一番の証拠だと考えての事だったが、それを聞いた百瀬は少しがっかりしたような顔をしていたのを渚は気付かなかった。 「そのΩの子はどんな子? この学校に他にΩいたっけ?」  百瀬が聞いてくるので渚は正直に話す。 「いや、他校のひとつ下の男の子。 明るくて面白くて、一緒にいるのがめっちゃ楽しい。 だからさ、俺はΩだなんだとかどうでもいいんだよ。 一緒にいて楽しいなら関係無い」  屈託無く言う彼の言葉はとても眩しく、そしてそんな彼に愛されるΩの子は、なんて羨ましいと胸がチクリと痛んだ。  途中まで一緒に帰って、渚は別れ際に何かあったら頼ってほしいから連絡先交換しようと言うと、彼はスマホを持ってないと言う。  なので、電話番号を紙に書いて渡した。 「まぁ何かあったら公衆電話でもいいから掛けてね」 「ありがとう」
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