Ωの存在

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 家に帰ると渚は叶芽に今日あった事をメッセージで話した。  Ωの百瀬は家族からも良く思われていない。  叶芽は家族や周りから愛されて育っているように思うが、本当はΩと言う事で嫌な思いを沢山しているのではと考える。  実際、弟の唯人が失礼な事を言ってしまった。  それは本当に申し訳無かった。   「俺は基本周りの人みんないい人ばっかだよ。 まぁ、学校で佑真以外の友達できないけど」  クラスメートは叶芽がΩだと言う理由であまり声を掛けてくれたりはしない。  聞かれたことは答えるが、友達にはなってくれそうに無い。  けれどたまに柊家と言う事で、遠回しにお金をせびられた事はある。  要は友達になる代わりにお金頂戴と言うような感じだった。  そう言う人とはあまり関わらないようにしているが、たまに友達欲しさに揺れ動く事もある。  まぁそう言う時は佑真がストッパーになってくれるのだが。   「そっか、カナちゃんも大変だね」  叶芽もΩが理由で沢山嫌な思いをしていると知って心を痛める。  けれど叶芽は自分は周りがいい人ばかりなのでラッキーだとポジティブに考えている。  そして世の中のΩには家族にさえ見捨てられる事があるのだと恐ろしく思う。  自分だったらきっと耐えられないので、可哀想だと思う。 「俺も何か出来ることがあれば協力するから」  せめて同じΩの自分が何か出来ればと思う。  その翌日、渚は学校に登校すると教室に向かっていると百瀬が声を掛けてきた。 「昨日はありがとう。 本当に助かった」 「ううん。百瀬の役に立てたんなら良かったよ」  他愛もない会話をして二人は別々の教室へ入る。  すると渚のクラスメートがΩの百瀬と仲良いのかと聞いてきた。 「いや、知り合ったばっかだし、そんな仲良いわけじゃない」  けれど、Ωだからと敬遠したりはしない。  敬遠しないからこそ、噂は立ってしまう。  その後も百瀬は渚を見かけると話しかけて来るようになった。  渚もそれを受け入れ、百瀬を気遣うような素振りを見せるもんだから、二人は付き合ってるなんて嘘の噂が広まってしまった。 「なんかごめんね。百瀬も迷惑でしょ?ほんっとちょっと仲良くしてるとすぐ変な噂立つんだから」 「そんな、僕は………」  憧れである渚と噂が立つ事に、百瀬としては満更では無かった。
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