強制連行

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繋いだ手に反対の手を重ねた常務は 「あゆ」と甘く私の名前を呼んだ その声に顔を上げると熱っぽい視線に囚われる こんな顔をさせているのが自分だということに自惚れてみても良いのかな そう思った瞬間、常務の顔が近づいてコツンとオデコが合わさった 「今更離さないけどな」 両方の笑窪を凹ませてクツリと笑うその笑顔に視線を奪われているうちに オデコが離れた次の瞬間には唇が重なっていた 「・・・んん・・・ん」 隙間なく重なった唇はそうなるのが当たり前みたいに従順で 歯列をなぞる舌を追いかければ そのまま絡め取られる 「・・・ぁ・・・ん・・・っ」 キスだけで滑落する癖に 躊躇う理由はなに? そんな私を見透かすように 唇を離した常務は濡れた舌で器用に唇を舐めながら 「嫌ならもうしないから、止めろ」 ブラウスのボタンに手をかけた 長い指が一つ、一つとそれを外して胸元が露わになる ここで止めれば、この関係は終わり そう思うだけで 動かない手は躊躇う気持ちまでも一瞬で消した 「あゆ」 「・・・常務」 「名前、知ってるだろ」 「・・・直人、さん」 「フッ、まぁ良い」 フロントホックが外されると直人さんの大きな手が膨らみを包み込んだ 散々抱かれた身体は簡単に熱を戻し始め 口からは艶めくような甘い吐息が溢れてくる 「あゆ」 名前を呼ばれるたび、開いた目が断片的に捉えるのは ネクタイを緩める手 ビニールパッケージを咥える妖艶な唇 その一コマ、一コマにキュンとして 身体の奥に熱が生まれる 胸の頂きに舌が這わされると そのむず痒い刺激に直人さんの頭を抱きしめた 「・・・ぁ、・・・すきっ、直人、さんっ」 「俺は、愛してる」 逃げ出すほどの背徳感と罪悪感が消えたあとは 溢れ出す気持ちを認めるだけだった fin
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