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――ずっと一緒にいられるって思ってた。
吹きつける風が冷たい、いつもの駅のホーム。
いつもの場所でいつものように全身で音楽に浸りながら、私は思いを馳せる。
そばにいてくれることに、慣れすぎて。いつのまにか、あなたの存在を確かめることさえしなくなってた……彼も、私も。
突然の別れに、心がまだ追いつかないよ。
得意なことも、苦手なことも、全部一緒。そっくりだったよね、私たち。まるで双子みたいに。
だけど、いくらそっくりでも、何もかもが同じってわけじゃない。
……そんなの、わかってたはずなのに。
お互いを補い合い、響き合って、パートナーとして素敵なハーモニーを奏でる。
そんな当たり前のことが、どれだけ大切だったか。
あなたのいない場所で、ずっと感じてるよ。彼と。
いつもあなたがいた、左側。ぽっかり空いてしまった空間。
ねえ。離れていても、元気でいますか?
あなたは今、どこにいるの?
~◆~◆~◆~
『お客様にお願いいたします。
最近、電車やホームで、ワイヤレスイヤホンの落とし物が大変多くなっております。
恐れ入りますが――』
「それなー。マジ腹立つ」
「キレんなって健太ー。こないだ落とした方、まだみつかんねーの?」
「キレてねーし。てか、片っぽだけでもまあまあ使えるし」
残った右のイヤホンだけ耳につけて強がる健太を、
「なにそれ、ウケんだけど」
並んで電車を待つ友人が、笑って指差した。
【 了 】
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