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次の日の閉店後も、その次の日も男の子はやって来た、相変わらず仮装無しで。
「あんた何処の店の子?他にも居るなら連れといで、いちおう明日までだけどね」
「あ…はい」
私の質問には答えず、男の子は今夜もお菓子の袋を大事そうに両手で抱えて丁寧なお辞儀をして帰っていった。
「エリー?あんた子どもに餌付けしてるんだって?店長が心配してたよ」
「餌付けって野良猫じゃあるまいし」
酔い醒ましに深夜のファミレスでマキちゃんと喋ってると男の子の話題になった、あの辺りの店は結構シングルマザーが多くて託児所を置いてる店もあるらしい、まぁざこ寝で寝かし付けるだけって話だけど。
「私も両親共働きで子どもの頃ハロウィンなんて無かったしなぁ…って思ってさ」
結構寂しかった子どもの頃を思い出してちょっとセンチになってしまった。
今日も居るかな?
ハロウィンイベント最終日、私は気合いの入ったゾンビメイクで店に出ると流石に怖すぎだとクレームが入り、裏でメイクを落としていた。
「せっかくドンキで買ってきたのに…」
仕方なく服も着替えた、黒いローブの魔法使いになってフロアに戻ろう、その前にちょっと一服しようとして裏口を出ると男の子が立っていた。
「えっ?閉店までまだ三時間あるよ?」
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ…」
「そーじゃなくて、アンタいつもこの時間から待ってたの?」
閉店の時間は一時だけど、ゴミ出しのタイミングはバラバラだ、男の子はこの時間からずっと待っていたのだ、びっくりして近付くと男の子の後ろにもう一人いた。
「うわっ!?」
ズタ袋をかぶったワンピースの女の子が血に塗られたナイフを持って隠れていた「こっ…怖すぎ…」私のゾンビメイクなんか子どもの遊びくらいの真に迫った仮装だ、男の子の仮装無しとコンビで居るとさらに怖さが増していた…。
「お菓子をくれなきゃ…」
「あ、あげるあげる、ちょっと待ってて!」
ハロウィンの合言葉に被せるようにセリフを止めて裏口のドアをバタンと閉めた。
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