2/8
前へ
/48ページ
次へ
 部屋に入ればどうしたって、風祭と花南がここでどうすごしているのか想像してしまう。でもそれはスマホの広告会社が()(えん)(りよ)に送りつけてくる、あられもない画像を見た時の不快感に(こく)()していて。  だから衣吹(いぶき)花南(かな)(きよ)()を取った。(ひと)り身の女というものは、そうやって男のいる女に勝手に気を(つか)い、自然と()(えん)になっていくものなのである。  (さび)しくないと言えば嘘になる。けれど衣吹(いぶき)はそれでまったくいいと思っている。なぜって男とちがい女は(へん)(たい)する。少女から女へ、妻から母へ。友情の(しつ)()らがなくてもその()(てい)(きよ)()感は変わるのだ。 「あれえ、緑茶が切れてたかも。冷たい麦茶でいいかなー、衣吹」 「なんでもいいよ」  なのになぁ。()(まど)うんだよなぁ。いきなりこちら(がわ)に戻って来ましたと宣言されても。 「ねえ、(かざ)(まつり)さんのなにが気に食わなかったの。なにも別れなくたって良かったんじゃ」  聞かずにはいられなかった。だって彼は背が高くて知的な()(がね)男子でスパダリで。いつもびしっと高そうなスーツを着こなしていて、廊下ですれちがうたび、感じの良い笑顔で(さわ)やかに()(しやく)してくる人だった。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加