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「なんでそんなことしたのよ? いいじゃん、そこいらのだらしない男どもより、風祭さんのが全然まっとうで」 「うん。そうなんだけど、ただ……」  花南はうつむく。そうやって亮はなんでも仕切って決めて、自分のいいようにする。か弱い女性である花南(かな)は自分についてくるって信じていて、それを正当で(かん)(ぺき)な愛の形だと思っている。 「――だからたとえ私がなにか意見したり反発しても、(りよう)は全力の正論で否定してくるの」  彼はその正しさが(あや)ういものだとは理解しない。世の中に正論は無数に存在するとも思わない。なぜって優秀で強い個である自分の意志だけが、(ゆい)(いつ)正当でいっとう価値あるものだから。 「ぶっちゃけ夜もそんなだったんだ」  花南は(うわ)()(づか)いになって衣吹を見やった。 「優しくしてくれるし上手いんだけど、リードするのはいつもむこうなんだよね」 ごめんね、いきなりこんな話をして、と相手は無力感に満ちたため息をつく。 「いいよ別に。なんでも聞くって言ったでしょ。いいから全部ぶちまけなよ」  気づけば身を乗り出してそう言っていた。花南にこんな申し訳なさそうな顔をさせたくない。すると衣吹の口調にはげまされたか、花南は気持ちを()みしめるように語り出した。
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