19/21
前へ
/48ページ
次へ
 力をこめて()み合わされ、白くなった指を見て衣吹(いぶき)はすべてが()に落ちた気がした。  いいや花南、あんたは馬鹿じゃない。むしろ(かしこ)い。スペックだけで男を値踏(ねぶ)みするそこいらの女子よりずっと。だからつき合い始めた当初から、(かざ)(まつり)の本性に(かい)()的だったんでしょう。  専業主婦だろうがバリキャリだろうが、結局のところ精神的には夫たる男性に(じゆう)(ぞく)して生きる女。これから先の長い人生、そんな生き方で本当にいいのか、そういうのは私だって(とき)(おり)考えてるよ。  ただ幸運にもあんたは過去にちがう愛されかたをした。そういう貴重な経験があった。だから地球の裏側までアイデンティティを探しに出かけて――そして再会してしまったんだね。より魂が近しい運命の相手(ひと)と。 「私、ユーリィに未練がましく連絡するの、もうやめようかと思ってたんだ」  夢の(かい)(こう)()たしても、花南は日本という現実に戻ってきた。  問題は地球を半周しなければ逢えない二人の(へだ)たりで。初恋を(じよう)(じゆ)させるにはすべてが遠すぎて。だから利害を()(はか)って()(きよう)し、風祭の(しつ)(よう)な要求も(しよう)(だく)したのに。  それをあの戦争が、根底からくつがえした。  ――自分の生活より、彼の命のが大事。 花南の本音に胸を()かれた気がした。相手が生きるか死ぬかという段になって、この子はようやく自分の本心を認めることができたのだ。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加